ジャンボサイズが評判のたこ焼き屋さんに、安さが自慢の八百屋さん、ベージュやピンクの肌着が並ぶ日用品店など、懐かしさが漂う上板橋南口商店街。大学生の頃、毎日この商店街を通って学校に通っていた。上京して初めて一人暮らしをした、思い出深いまちだ。当時の記憶は色濃く残っており、数年ぶりに訪れてみても商店街の変化にはすぐに気づく。別の取材で久々にこの商店街を通ったとき、新しいお店ができているのに気づいて思わず足を止めた。ラフな雰囲気で、メニューには美味しそうな料理やお酒が並んでいた。今まで南口商店街にはあまりなかったタイプのおしゃれなお店。気になる。その日は通り過ぎたものの、数日後にいたばしPayで取材するお店がここだと知ったときには、ちょっとした運命を感じてしまった。お店の名前は、「GENERAL PARLOR(ジェネラルパーラー)」。2022年2月にオープンした。昼は自慢のグリルサンドがメインのカフェダイナー、夕方からはブロシェット(洋風串焼き)や一品料理を楽しめる気楽な洋風酒場として営業。クラフトビールやワインを中心に、アルコール類も豊富に揃えている。このお店のオーナー・吉野さんは、20年以上飲食店経営をやってきた人だ。新宿を中心に長くお店を続けてきたが、人が流動的な土地柄もあり、なかなかお客さんが定着しないことへの課題感を抱いていたという。「コロナ禍でいろいろなことを経験するなかで、もうちょっとローカルな感じで、地域のお客さんと長くお付き合いできるようなお店をやりたいと考えるようになりました。せっかくなら10年以上住んでいる上板橋でできないかと思っていたところ、この物件を見つけたんです」1年ほど空き物件だった建物の外観は、ほぼそのまま活用。店内はシンプルだが、センスの良さを感じる居心地の良い空間になっている。店名の「GENERAL PARLOR」は、老若男女が気軽に集える、雑多で多様なお店にしたいという、吉野さんの思いから名づけられた。創業時からこのお店で調理を担当しているのは、店長の守山さん。現在30代前半ながら、料理人歴は15年ほど。以前は、都内でイタリアンの料理人をしていた。もともと吉野さんが新宿で経営していたお店の常連だったこともあり、求人を見たときに縁を感じて、このGENERAL PARLORに店長として入ったのだそう。2022年2月といえば、まだまだコロナ禍の最中。オープン直後はまだ20時以降の営業ができず、昼のみの営業からスタート。自慢のグリルサンドやトースト、焼き菓子などのスイーツをメインに提供していた。それもあってか、地域の人には“おしゃれなカフェ”のイメージを持たれることが多かった。しかしGENERAL PARLORが目指しているのは、何屋にもとらわれない、地元の人がいつでも気軽に立ち寄れるお店。コーヒーもあれば、お酒もある。クラフトビールやワインもあれば、焼酎やホッピーも揃っている。よりたくさんの人に来てほしいという思いから、規制が緩和されてからは、昼11時から夜11時(日曜は夜10時)まで、休まず通し営業をしている。夕方から夜にかけての洋風居酒屋でのみ提供しているブロシェットは、GENERAL PARLORの看板メニュー。一般的な焼鳥サイズの2~3倍の大きさの、ビッグな洋風串焼きだ。守山さんが丁寧に一本一本串打ちをして焼いている。ラム、チキン、牛、豚と4種類あり、どれも素材を活かした絶妙な味付けがされていて絶品。ぜひ全種類味わってみてほしい。メニューや使う食材にはこだわっているけれど、それを全面的にアピールしたり、お客さんに押し付けたりすることはしない。誰でもふらっと立ち寄りやすい気軽さを、何よりも大事にしている。まずはどんなお店なのか知ってもらおうと、丁寧に接客をしていくうちに、少しずつ地域のお客さんが増えてきた。今では、リピーターさんもかなり増えているという。なかには、週に2〜3回通うおばあちゃんもいて、ボリューミーなグリルサンドもぺろっと食べていくそうだ。「平日の昼間は、ご近所の主婦の方やおばあちゃんが多い印象ですね。夜は40~50代のご夫婦がゆっくりお酒を飲んでいくこともありますし、最近では若い世代のお客さんも増えてきました。土日はファミリーが多いですね。テラス席はペットOKにしているので、犬を連れたお客さんも毎日のようにいらっしゃいます」上板橋エリアのお店で、ペットと一緒に食事を楽しめるお店はなかなか貴重だ。そうしているのは、オーナー吉野さんが犬好きだから(柴犬を飼っているそう)。南口商店街を抜けた先には、ドッグランが併設された城北中央公園があり、土日には上板橋以外のお客さんがランチをしにくるケースも多い。天気がいい日には、グリルサンドをテイクアウトして公園でピクニックするのも楽しそうだ。テイクアウトの「シルクアイスクリーム」も人気で、仕事帰りに買っていく人も多いらしい。バニラ、チョコレート、抹茶、巨峰、チョコミント、練乳いちごと種類も豊富だ。ちなみに、小学生以下の子どもが自分で注文できたら50円引きになるという、可愛らしいサービスも。素敵だと思ったのは、昼と夜で提供する料理は変わるが、ドリンクメニューは一日中同じメニューであること。それはつまり、昼からお酒を飲んでもいいし、夜にコーヒーだけ飲みに来るのもいいということだ。たしかにお酒を飲んだあとに、コーヒーを飲んで締めたくなる日もあるから、これは嬉しいと思う人も多いのではないだろうか。「たとえば、アイスクリームを買いにきてくれる子どもたちがいて、テラスではペットを連れた方たちがお茶をしていて、店内ではカップルやお友達同士でご飯とお酒を楽しんでいるみたいな、そんなラフで雑多な感じが理想なんです」多様な人が思い思いの過ごし方で同じ空間に共存している感じは、まちの公園に似ているのかもしれない。居心地の良い公園が近くにあれば、天気の良い日に仲の良い人を呼んで一緒に過ごしたくなる。このGENERAL PARLORでも、一度お店に来てくれた人が別の誰かを連れてくるというケースもよくあるそうだ。このお店に行くときは、板橋区外の人もまだ未経験という人もぜひ、いたばしPayを始めてほしい。なぜなら、セブン-イレブンがすぐ近くにあるから。ここでチャージをしてから向かえば準備万端、もし忘れていても、パパっとチャージに行けるから安心だ。最後に、以前は都心の方で働いていた守山さんに、この板橋のまちはどう映っているのか聞いてみた。「上板橋は下町っぽさがあるし、人のあたたかさを感じます。ちょっと外に買い物に出れば、顔見知りの方が挨拶してくださるようになりましたし、まちの皆さんにすごく助けられていますね。だからこそ、よりたくさんの地域の方々に気軽に立ち寄ってもらえるようなお店にしていきたいと思っています」最初にこのお店の前を通りがかったときに私の中で生まれた“おしゃれなお店”という印象が、お話を聞くなかで少し形を変えた。もちろん雰囲気が良いのは間違いないのだけど、想像以上に懐が深く、みんなに開かれた場所だった。ひとりでも、大切な人とでもいい。何でもない日にここに来て、昼からお酒を飲むのはきっと最高に楽しいはずだ。